5月15日(月)、第16回OB講演会が行われました。講師の山脇岳志氏は朝日新聞社でジャーナリストとして活躍され、現在はスマートニュース社でメディア研究所所長を務めています。六甲時代のよかったこととして、よい仲間、先生との出会いを挙げられました。山脇さんがジャーナリストの道に進むきっかけとなったのは、故室田先生(国語科)に文章を褒められたことでした。また、外国人の神父が何人もいる学校で教育を受けたおかげで、海外アレルギーがなくなり、異文化理解にも役立ったそうです。
本題に入ると、最初にフェイクニュースを見分けるクイズがあり、会場は大いに盛りあがりました。実はフェイクニュースを見破ることは非常に難しく、写真や動画を観て、私たちはつい騙されてしまうことも多いのです。それを防ぐためには、たとえば「だいじかな(だれ、いつ、情報、関係、なぜ:情報の発信源やコンテキストを理解する)」法、「横読み(さまざまなサイトを開き、情報を横断的に確認する)」法など、いくつかの方法があるそうです。
良くない知らせもあります。いま流行りのAI技術を駆使すれば、ディープ・フェイクと呼ばれる虚構情報を簡単に流布することができます。話題のChat GPTを用いれば、「不自然でない」フェイク情報を量産できるでしょう。さらに歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏はこう言います。「私たち人間は、虚構の物語を創作して、それを信じる能力のおかげで、世界を征服した。したがって、私たちは、虚構と現実を見分けるのが大の苦手だ」と。続けて彼は「人類が文明を築けたのは『虚構』を信じるようになったから」とさえ、指摘するのです。いったい私たちはどうすればいいのでしょうか。
最も大切なのはメディアリテラシーを身につけること、と山脇さんは語ります。そのためには、①すべてのメッセージが「再構成」されていることを理解すること、②ときどきCritical Thinking(吟味思考)を行うこと、③メディアの仕組みを理解することが必要なのだそうです。
リンカーンの「意思あるところに道がある」という言葉を六甲生に贈って、山脇氏の講演は締めくくりとなりました。質疑応答の時間では、フェイクニュースに関する質問とともに、山脇さんも所属していたマスメディアのあり方について、厳しい質問が寄せられました。それらの質問に丁寧に答え、終始穏やかな表情で六甲生に語りかける山脇さんの姿が、とても印象的でした。
(40期 山岸禎一)