2022年10月3日(月)、第15回OB講演会は東京大学大学院法学政治学研究科教授の五百旗頭薫氏(49期)を講師に開催されました。
『歴史を学ぶ・活かす・伝える』と題された今回の講演では、まず歴史家の道を選んだ理由が述べられました。「弱さ」というキーワードが印象的でした。在学中、運動部で十分に力を発揮できず、退部したことから自分の「弱さ」を感じ、同じ間違いを繰り返す人間の「弱さ」に興味をもち、人間の営みを研究する歴史学に関心が向いたそうです。
五百旗頭さんにとって幸いだったのは、米ソ冷戦が終結し、互いに絶対的正義を主張し合うイデオロギー対立の時代が終焉を迎えたことでした。当時観ていたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」は、絶対善や絶対悪を描かない、まさに冷戦後の世界を反映した作品でした。この作品にも励まされて、五百旗頭さんは研究を進めることができたそうです。
講演の後半は、現代政治に話題が及びました。KADOKAWA社から『学習漫画日本の歴史第16巻』の監修依頼が舞い込み、その編集作業が大詰めの2022年7月、安倍元首相が暗殺されます。この事件により、第16巻のカバーすべき時期は2022年参院選まで延長され、編集スケジュールは非常にタイトなものになりました。最終ページの構成をめぐり、編集部と真剣な対話を繰り返したとのことです。なお講演後の10月13日、第16巻は無事刊行とのこと、お疲れ様でした。
五百旗頭さんは生徒の質問に、「いい質問ですね」「本質を衝いた問いですね」と当意即妙な答えを返し、「六甲生は優秀で活気がある」と、喜んでくださいました。穏やかな中に芯の通ったお話しぶりが、生徒の反応を引き出したのでしょう。
五百旗頭薫さん、サポートくださった委員長岡本剣さんをはじめ伯友会の皆様に、心より御礼申し上げます。
六甲学院教諭 山岸禎一(40期)